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12/03/05
第2回 星ヶ丘のチンパンジー

ごく最近、大変示唆に富んだ本を読んだので紹介します。
書名は「星ヶ岡のチンパンジー」で、川上徹也さんというビジネスアドバイザーが書かれた、一風変わった経営書です。
経営書といっても、ああしろ・こうしろ、或いは、あれだめ・これだめ式の著者の経営ノウハウを押し付ける本ではありません。読んだ後、自らの事業の本質を改めて振り返りたくなってしまう。そんな気にさせる本です。
 
ある国に名前がキエという男の子がいました。10歳で両親をなくしたキエは、料理が上手だったお母さんの替わりに兄弟たちに料理を作る役割を引き受けていました。キエの料理の腕は兄弟が大変満足するほどで、特にヤサボノというその国の代表的な家庭料理は、絶賛ものでした。いつかこのヤサボノをみんなに食べてもらいたい、そういう想いを持ったキエは、15歳でお金をためるために働き始め、それから7年後食堂を街のはずれの小さな丘の上に開店しました。そんな不便な場所でしかお店を開けるお金がたまらなかったのです。それに子供の時いつも遊びに来ていた丘が大好きだったからでもありました。
店を開くと、好奇心旺盛な人がやってきました。そして「思ったよりおいしい。」との評判が広がって、繁盛しだしました。
順調に見えるかのようなそんなある日、街の繁華街にレストランができました。レストランは、いろいろな料理をメニューに載せていました。もちろんヤサボノもありました。そのうちだんだんキエの店に来るお客が減ってレストランに流れていくようになりました。あわてたキエは、ある人のアドバイスに従って、ヤサボノの料金を下げてみました。するとお客は戻りかけましたが、レストランが対抗して値を下げるとまたお客は減り、そんなことをしている内に、利益が減ってお店がやっていけなくなりました。
すると別の人が、「価格の競争は不毛だよ、味で勝負しなくちゃ。」とアドバイスをくれました。キエは、そのとおりだと思い、ヤサボノの料金をもとに戻すと、以前よりずっとおいしく思えるように、貴重な食材を使ったヤサボノを始めました。
珍しいもの好きなお客が増えてきて、キエの店も何とかなるかな、と思えたつかの間に、今度はレスランが、同じ食材を使ったヤサボノを出しました。キエは、もっと珍しいヤサボノを出さなきゃ、と高価な食材を求める間にお店は利益がでず、やっていけなくなりました。
どうしたらよいか分からなくなったキエが、食堂の外の芝の上にひっくり返ってぼう然としていると、一人のお客の言葉が耳によみがえりました。
「ヤサボノはたしかにおいしい。しかし、店はつまらんな。」
キエは考え始めました。「自分は、おいしいヤサボノを求めてお客が来るのだから、味が良ければお客は満足してくれると思っていた。でもおいしい食事を味わうには、味だけではない。同じ料理を食べても、おいしく思えるときとそうでないときって確かにあるよな。お金を払って食事をする一番の目的は、何だろう。料理の味だけではない。そうか、食事をする楽しさが、お客を満足させるのだ。」
そう気づいたキエは、こんどは迷いませんでした。丘の上の自然の中という立地、夜になると満天の星空になるという利点を活かして、ついにお客に満足してもらえる繁盛店を作り上げたのです。

かなり私なりの意訳が入っていますが、こんな内容のストーリーです。

お客さまに買ってもらおうとする思いが強すぎ、価格だけ・品質だけにしか目がいかなくなって、苦しんでいる企業や、業界は多いと思います。
お客様に何を提供することで、お客様の満足を得ようとしているのか。
それを明解にし、そしてそれを全社一丸で追及する企業でありたいと思いました。

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